第37回大会 全国高等学校IT・簿記選手権大会
7人の先生が語る我が校のIT・簿記教育

第37回大会 引率教師懇談会の様子

引率教師懇談会が選手たちの競技時間を利用して開催されます。毎年、IT教育・簿記教育に熱心に取り組んでいる先生方から、実体験にもとづいた貴重な講演があり、この講演を楽しみにしている先生がたくさんいます。講演を聞いてこの大会の意義を再確認したり、指導方法を参考にしたり、他にはない有意義な時間になっています。また、講演の合間には先生同士が再会を喜んだり、談笑したりとこの懇談会が先生方の貴重な情報交換と交流の場になっています。

講演をして頂いた先生方

部活動を通じて得られるものは高度な資格だけではない

千葉県立千葉商業高等学校  

竹田 大起先生

千葉県立千葉商業高校は、創立95年目を迎えた伝統ある商業高校であり、各学年商業科6クラス、情報システム科2クラスからなり、973名の生徒が在籍しております。なお、1年はくくり募集を行っており、全員が同じ教育課程で学んでおります。また、千葉県では学科名が多様化したため、平成30年度入学生から商業科か情報処理科に学科名が統一されます。本校では進路先は進学が約7割、就職が約3割となっており、進学の方が割合が高いため、本校ではビジネス系進学校として位置付け、生徒募集を行っております。

簿記部では、平成5年より日商簿記1級の指導を開始し、今年度の6月検定を含めて93名の合格者を出しております。毎年コンスタントに合格者を出せる秘訣は、簿記部での約束にあります。それは、「日本一の努力」と「団結」です。「日本一の努力」では、たとえ検定に合格できなかったとしても、決して諦めず、常に前を向いて全力で取り組み続けるという姿勢を身に付けます。「団結」では、簿記部である以上、個人ではなく団体として活動していることに重点を置き、一生懸命取り組む生徒が周囲のモチベーションを引き上げ、理解が遅れている生徒に手を差し伸べて、全員で勉強していることを意識させます。難関試験に合格した生徒が偉いのではなく、一生懸命取り組んだ生徒が人として大きな成長を遂げると考えております。以上の2点より、先輩が目標に向かって努力し、日商簿記1級や税理士試験などの難関資格に合格。後輩はその姿を間近で見て先輩を目標とする。この伝統が千葉商業高校簿記部の最大の強みであります。

今年度も全国高等学校IT・簿記選手権大会に出場させていただいておりますが、この大会においても生徒が人として成長する大きなきっかけになっております。今年度より試験的に実施している、ただ分からない問題を教え合うのではなく、知識の蓄積を狙いとした、生徒が生徒にそれぞれ得意分野を教える活動により、生徒の実力も人間性も磨かれたように感じます。毎年このような大会を開催していただけることに感謝を申し上げるとともに、今後の教育活動に邁進してまいります。

県立沼津商業高等学校 電算機部の取り組み

静岡県立沼津商業高等学校  

佐野 陽一先生

本校は明治32年に開校され、本年、119年目を迎える伝統校です。「自主 友情 進取」という校訓を掲げ、実践に富み、人との輪を重んずる協調性を持ち、何事にも積極的に取り組む人間育成を目指しています。現在、各学年『総合ビジネス科』3クラス、『情報ビジネス科』2クラスの計5クラス編成です。『総合ビジネス科』は2年生から『会計コース』と『経営コース』に分かれます。『情報ビジネス科』は1年生後半から『システム』・『IT』・『マルチメディア』の3コースに分かれます。本校のキャラクターである総合ビジネス科の『ぶっきー』、情報ビジネス科の『まうすけ』はマルチメディアコースの生徒がデザインしたものです。部活動は、運動部・文化部ともに盛んで、特に弓道部・女子バレーボール部・女子ホッケー部は高校総体に出場しています。また吹奏楽部は部員が74名所属しています。進路としては、就職・進学ともに約50%です。就職状況については、7年連続就職内定率100%を達成しています。

電算機部の部訓は、「勝って(受かって)驕るな! 負けて(落ちて)腐るな!」です。またテーマとして「考動力(こうどうりょく)」を掲げています。今何をしなくてはいけないかを考えて行動しなさいということです。部員数は1年生10名、2年生10名、3年生14名の計34名で活動しています。

活動内容は、1年生は、主に全商電卓検定・ビジネス文書検定・情報処理検定の1級取得、3冠を目指し、ITパスポート試験合格を目標としています。2・3年生は、基本情報技術者試験・応用情報技術者試験等の高度資格の取得及び各種競技大会の上位入賞を目指しています。大会実績は第34回全国高等学校IT・簿記選手権大会(全国大会)にてIT部門で念願の初優勝を遂げました。

また、地域貢献の一環として、本年よりJ3リーグに参入した地元のサッカーチーム「アスルクラロ沼津」のホームゲームでのサポートスタッフとして、昨年から4回にわたり、ボランティア活動を行っています。

電算機部は「礼法」を重んじ、「考動力」を身に着けさせ、「社会人基礎力」を養成することを目的として日々活動しています。

簿記部と1級への取り組み

岐阜県立大垣商業高等学校  

山田 章博先生

大垣商業高校は、創立116周年の岐阜県では一番歴史のある商業高校です。総合ビジネス科、会計科、情報科の3科からなり、1年次は共通基礎科目、2年次から類型選択を行い7クラスに別れ学習しています。

簿記部は、簿記部門とビジネス計算部門からなり、ビジネス計算部門は電卓の練習をいたします。簿記部門は60名からなる野球部、吹奏楽部に次ぐ3番目の規模の部活動です。

・簿記部門の活動内容について

1年次は6月の日商簿記3級取得を目標とし、今年も全員が取得することができました。6月以降は日商簿記2級の取得を目指し活動しますが、理解度により日商簿記1級の範囲を並行して学習する生徒もいます。1年生の指導は上級生が全て行います。

2年次・3年次は全員が資格取得と競技大会優勝を目標に練習に励みます。競技大会についてはIT・簿記選手権大会、簿記コンクールなど目標大会ごとに4チームを編成し、成績上位者だけだはなく、全員が資格取得と競技大会の優勝を目指します。

・日商簿記1級・全経簿記上級の取り組み

自宅部活、授業、部活の連動

自宅部活では、外部教材を使用し自主学習、授業で1級の解説・演習、部活では模試を計測・解説を行います。日商簿記1級・全経簿記上級の学習では1人の学習に陥りがちです。そこで「学習進度」を「見える化」し、学習範囲、進捗度を表にして掲示し、学習意欲を高めています。

・大会練習

大会練習については、3年生・2年生が合同チームを結成し、練習メニューは全て3年生が中心になって決め、合宿の計画を提案するなど創意・工夫をしながら進めています。

高度な資格は教員主導、大会練習は上級生主導で指導をし、昨年度は日商簿記1級に5名、全経簿記上級に5名の合格者を輩出いたしました。また、競技大会でも、全国IT・簿記選手権大会 準優勝、簿記コンクール 団体3位、全経簿記競技大会 団体優勝を果たすことができました。

・全国で唯一? 簿記部の練習にランニングもあります。(中部ブロックでは有名)

体力づくり、忍耐力、集中力を養うために行っています。

体験にもとづく考える力

三重県立四日市商業高等学校  

尾上 篤先生

三重県立四日市商業高校は、商業科5クラス、情報マネジメント科2クラスの計7クラスからなります。
最近よく思うことは、情報教育を通じて考える力を向上させられないかということです。

四日市商業では課題研究という、資格系2単位とイベント系2単位の授業があり、資格系は資格の取得を目指します。

イベント系課題研究の取り組み

15の講座があり、そのうち11の講座が外部へ出て、または外部の方とのコミュニケーションをとって実施する講座です。

その中でパソコン教室の事例を紹介いたします。パソコン教室は学校の施設設備を使い、地域の方にパソコンの基本操作からソフトウェアの活用方法までを生徒が講師になって教えるという講座です。準備段階では、今までの授業の延長感覚ですべきことが混沌としていました。しかし、実際に受講者とコミュニケーションをとることでやるべきことが見えてきました。そして、やりがいを実感し深く考え、理解も深まるという変化が見られました。

これを、通常の授業で利用できないかと、プログラミングの授業で実践いたしました。配列の講義を行う前に、流れ図のアルゴリズムに沿って、生徒が変数になりアンケート集計をしてみました。参加させ印象に残ったところで、配列の講義を行いました。

生徒が実際に活動して、自ら進んで学習するようになり、より理解度が深くなったように思います。これをヒントに他の授業展開も考えていきたいと思っています。

競技大会を通して、部員間の絆が深まりました

神戸市立神港・神港橘高等学校  

清川 光慶先生

神戸市立神港橘高等学校は、神戸市立兵庫商業高等学校と神戸市立神港高等学校の統合再編により設立されました。神戸市立神港高等学校は、明治40年に設立した100年を超える伝統校であり、現在3年生が商業科2クラス、情報処理科1クラスです。また神戸市立神港橘高等学校は平成28年4月に設立し、開校2年目の学校で、現在1年生と2年生で各8クラスあります。神戸市立神港橘高等学校では、入学時に『みらい商学科』で一括募集をし、1年間生徒自身で会計に向いているのか、情報に向いているのかを考えてもらいます。2年生以降は『会計類型』『情報類型システム開発コース』『情報類型システム活用コース』に分かれて学習をします。

情報研究部は生徒と一緒に決めた三つの目標のもとに活動しています。まず全商の検定1級を3個以上取ること。次にITパスポート試験または基本情報技術者試験以上の国家試験に合格すること。最後に競技大会の全国出場を果たすことです。

競技大会への取り組みとして、まずは右も左もわからない1年生のうちから参加をします。これは2年生以降のイメージ作りのためです。次にチームとしての意識を高めていきます。具体的には部員全員で同じ問題を解き、順位をつけ、校内で競い合います。特に演習後の見直しは参加メンバー全員で行い、わからないところは全員でつぶします。そして大会前には、1部・2部とも80点、計160点以上をそれぞれ最低限のノルマとして練習しました。この結果、地区大会に神港高校3年生3人と神港橘高校1・2年生5人で臨み、団体準優勝・個人準優勝となりました。

大会後に振り返ってみると、今年度で閉校となる神港高等学校3年生の生徒にとっては、自分が愛した伝統ある学校がなくなってしまう、また野球部やバスケット部などが負けてどんどん引退していく中で自分たちが最後の砦、ここで有終の美を飾りたいという気持ちが通常以上の力を出してくれたのではないかと思います。全国大会出場が決まった時、私は全国大会の表彰式後に「もっとこうすればよかったのに」と思わないように「もうやり残したことはない」と思えるように練習に打ち込もうと生徒に伝えました。

最後になりますが、大会を通して交流がほとんどなかった生徒たちの間で、「こういうやり方がある」「こういうふうに解けばいいよ」といったやり取りが増えていきました。このような様子を見ると競技大会の出場は生徒の意欲向上、知識技術向上にとても役立っていると実感しています。そして、競技会参加者の中から5年後、10年後にAIやIoT社会の旗振り役として活躍できる生徒が出てくることを願っています。

町立から私立へ 学校の変革と簿記部の指導について

福岡女子商業高等学校  

秋吉 秀一先生

本校は、昭和25年に設立され昨年、町立から私立へと移管されました。昨年度までは北海道以外で唯一の町村立の高等学校でしたが、少子化による定員割れと建物の老朽化により、町立での存続が困難となったため、今年度より私立化となりました。現在は、Chromebookを導入し、全職員と全生徒に無料で貸し出しをしています。それに伴い、授業ではペーパーレス化を見越したICT活用教育に取り組んでいるところです。

変革にあたり、昨年度まで簿記部を指導されていた先生が異動となり、今年度より本校に勤務することになった私が簿記部の顧問となったことで、生徒も戸惑いからスタートし、私自身も非常に戸惑いながら指導を行ってきました。現在は、簿記部としてどういった流れで進めていくのか理解ができてきたところです。しかし、部員集めに力を入れることができず1年生の部員は1名しかいない現状です。ここから徐々に部員集めの策を練り、部員を集めていきたいと考えています。

私が簿記部を指導している中でのモットーは、簿記を学ぶということだけではなく、自ら考え研究していく場にしていきたいと考えています。検定に合格するとか、全国大会に出場するとかという目標だけでなく、それを達成するためにどうしたらいいのかを教員側が指し示すのだけではなく、生徒自身が考え、自分で目標を掲げ、それを行動していく能動的な簿記部をこれから作っていきたいと考えています。

まだ私も簿記部としての経験も薄いので、先生方のご指導を頂きながら、頑張っていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

コンピュータビジネス科とコンピュータ部の沿革・指導について

筑紫台高等学校  

山本 和幸先生

本校は太宰府天満宮に隣接する高等学校です。創立61周年を迎え、生徒は約1600名在籍しています。設置学科は、普通科、総合学科、コンピュータビジネス科、工業科の4学科、普通科が3コース、総合学科が7コース、コンピュータビジネス学科が2コース、工業科が4コースの16コースです。来年度の新入生からiPadを導入します。

コンピュータビジネス科の紹介をさせていただきます。コンピュータビジネス科は、平成5年に情報処理科として設立されました。コンピュータビジネス科は商業科に属します。平成5年当時、成長が期待される情報分野に特化した科を作るという面と商業の方が資格をたくさんとれるのではと言う当時の学校長の意向もあり、情報処理科が出来ました。当時の目標は、将来国家試験である「第二種情報処理技術者試験」の合格者を排出することでした。そして、平成20年に現在のコンピュータビジネス科へ科名変更を行いました。科の創設当時は、ローマ字打ち、かな打ち、どちらが良いのか検討しましたが、COBOL実習を行うためにもローマ字打ちが良いという結論に3期生の時に落ち着きました。その頃からワープロの大会にも参加させていただきました。

コンピュータビジネス科は、1学年2クラス定員70名です。生徒は1年次、2年次に基礎からコンピュータとビジネス(簿記)を勉強し3年次にコンピュータ関係に就きたい人は情報系の授業、事務や販売などに就きたい人はビジネス系の授業を選択できるところに特徴があります。コンピュータビジネス科のカリキュラムでは、国家試験の基本情報から COBOL がなくなるまで1年生の授業で導入します。全商のjava対策は、2年次で行います。よって、プログラミングⅠでCOBOL、プログラミングⅡでjava というカリキュラムになっています。また、カリキュラム内の選択は、ビジネスコースがビジネス経済と簿記演習、情報コースがビジネス情報と情報演習で週5時間実施しています。検定は全商の検定を中心に受験しています。

また、3年次の課題研究授業では、地域交流のため平成21年度より太宰府天満宮の参道にある店舗のポスターなどの制作など行い好評を得ています。4人1組で参道の区画担当を決めて生徒が交渉・営業を行います。要望は、メニューやポスターなど外国の観光客の方も多いので中国語やハングルで作って下さいと言う依頼もあります。

今回の大会は、コンピュータ部が取り組みました。元々のコンピュータ部は、ゲームを作って自己満足していた部活でしたが、平成10年に3年生の女子が独学で第二種情報処理技術者試験(現在の基本情報技術者試験)に合格したことにあります。それをきっかけに本校でも国家試験への取り組みを始めました。平成14年には、本格的に部活の内容を一新して国家試験に取り組みました。コンピュータ部は現在45名の部員がいます。国家試験対策だけでなく、ワープロの大会に出場したり、web コンテストに出場したり、パソコンの組み立てなど部門を分けて行っています。出場した大会では、上位入賞したこともあります。部内での国家試験対策は、入学して6月ぐらいまではパソコンを打たせて、その後、基本情報技術者試験対策を行っていきます。1年生の段階で午前の範囲が終わり希望者は2年生の4月で受験します。午前だけ頑張りなさいと言う事で持っていきますが、早ければこの段階で受かる生徒もいます。午後対策は、過去問を解かせてひたすら解説を行い少しでも理解させるようにします。疑似言語が1つのネックだと思っています。言語は、表計算と COBOL、好きな方をとらせています。このように指導することで、2年次の秋の基本情報技術者試験で合格を目指しています。基本情報処理技術者試験に受かると、応用情報技術者試験はさらに難関ですが日商簿記の2級から1級合格までの難しさはないと考えています。平成28年度には本校で初めて情報セキュリティスペシャリストに合格者が出ました。この生徒は成績がトップと言うわけではなく、情報が得意で1年生の秋に基本情報技術者試験に合格し、2年生の春に応用情報技術者試験に合格しました。2年生の秋に情報セキュリティスペシャリストに挑戦しましたが合格できず、3年生の4月には熊本地震のため受験することが出来ませんでした、本人もショックでなかなか集中できなかったのですが、2回目のチャレンジで合格しました。

この大会は、平成16年福岡ブロックがあった時には参加しました。ブロックが合体し、また会場の関係もあり参加を控えていたのですが、平成25年度大分商業高校が会場の時以降、参加させていただいております。また、全商主催の情報処理競技大会の方にも出場しております。コンピュータ部はコンピュータビジネス科の生徒だけではなく普通科や工業科の生徒もいます。国家試験対策に関しては、他科から来る生徒は厳しいので、マルチメディア系の勉強やワープロの勉強をしています。国家試験対策に関しては挑戦するのが1年後、合格するのが2年後ということで動機づけやモチベーションの維持が大変です。生徒の中にはもう無理と思ったら投げ出してしまう生徒も少なからずいます。10名入ったら10名残るわけでありません。基本情報技術者試験が無理だと思った生徒にはITパスポートを受験させるなど、将来役に立つ検定試験を受験させるように指導を行っています。

進学については、取得資格を最大限にいかし国公立大学や学費免除等で専門学校へと幅広く指導しています。

第37回大会 平成29年7月26日実施

神戸市立神港・神港橘高等学校 清川 光慶先生、千葉県立千葉商業高等学校 竹田 大起先生、静岡県立沼津商業高等学校 佐野 陽一先生の講演は
平成29年8月8日実施