第36回大会 全国高等学校IT・簿記選手権大会
9人の先生が語る我が校のIT・簿記教育

第36回大会 引率教師懇談会の様子

引率教師懇談会が選手たちの競技時間を利用して開催されます。毎年、IT教育・簿記教育に熱心に取り組んでいる先生方から、実体験にもとづいた貴重な講演があり、この講演を楽しみにしている先生がたくさんいます。講演を聞いてこの大会の意義を再確認したり、指導方法を参考にしたり、他にはない有意義な時間になっています。また、講演の合間には先生同士が再会を喜んだり、談笑したりとこの懇談会が先生方の貴重な情報交換と交流の場になっています。

講演をして頂いた先生方

部員同士、家族的な親子の関係で部活をしています

福島県立若松商業高等学校  

林 聖一先生

1.本校の概要

本校がある会津若松市(人口約12万6千人)は福島県の西側に位置し、磐梯山や猪苗代湖など豊かな自然に囲まれた会津盆地の南東部に位置しています。
市内には歴史的な名所や史跡が数多く残っており、観光産業が盛んです。また、古くから酒や漆器、絵ろうそくなどの伝統工芸が受け継がれており、現在でもそれらのお店があちらこちらに見られます。
本校は会津若松市の中心部に位置し、白虎隊の学び舎である会津藩校日新館跡に設置されました。学校の東側には石垣や桜が美しい鶴ヶ城があり、輝く歴史と伝統の地で創立105年を迎えました。

2.簿記研究部の活動

現在、簿記研究部には10名在籍しています。当面の大きな問題して、部員数が少ないので、今後のことを考えると部員の獲得が課題です。
さて、若商簿記研究部は、基本二年生が母親となり、一年生を指導しています。検定や大会参加に向けた部員の育成にあたっています。そのため、部員同士は家族的な親子の関係で部活をしています。この関係の中で、挨拶やマナーなど基本的な生活習慣等を上級生から下級生へと受け継いでいく流れで、若商簿記研究部は活動しています。
顧問としては、「明るく、楽しく、たくましく」簿記を学習する環境を整えて生きたいと思います。

学校と部活動の紹介

岩手県立盛岡商業高等学校  

大石 一暁先生

本校は大正2年に創立され、平成25年に創立100周年を迎えた歴史ある学校です。盛岡商業高校というとサッカーが盛んな学校というイメージがありますが、平成19年に全国高等学校サッカー選手権大会で優勝しています。本校では、現在「流通ビジネス科」「会計ビジネス科」「情報ビジネス科」を設置しています。
校訓は「至誠」「協同」「自立」で、心身ともに健全で、広い視野と「士魂商才」を身に付け、社会で創造的に活躍できる人材を育成することを教育目標としています。近年は地域貢献活動にも力を入れており、昨年8月3日には、盛岡さんさまつりに1年生全員で参加しました。今年も8月1日から開催される盛岡さんさまつりに参加する予定です。
平成28年7月7日には、岩手県内の高等学校としては初めて、岩手県立大学ソフトウェア情報学部と高大連携協定を締結しました。本校情報ビジネス学科の授業に同大、大学院の学生がアシスタントとして参加し、継続的な授業支援などの活動が展開されています。5月から実施された2年生のプログラミングの授業支援では、本校の卒業生2名がティーチング・アシスタントとして参加し、生徒が習得したプログラミング言語を使い学習アプリケーション開発をサポートしてくれました。
本校における各種情報処理競技大会への参加は、「情報処理研究部」の部活動として行っています。前任の先生から引き継いで2年目となりますが、今後の課題は、全国大会でも活躍できるチームに育てることです。また、部活動以外の生徒の国家試験合格実績を上げること、平常授業におけるアクティブラーニングの導入にも取り組んで行きたいと考えております。

自分で考え、解決していく力をサポート

愛知県立岡崎商業高等学校  

小島 伸介先生

岡崎商業高等学校は、国際ビジネス科、総合ビジネス科、情報会計科、情報処理科の4学科からなります。その中で情報処理科以外の3学科に財務会計Ⅰと原価計算の科目があり、すべての学科も同じ水準まで取り組もうと、両科目の単位数を同じにしております。
すべての学科で日商簿記2級を目指そうとすると、生徒たちは素直でやる気もあり頑張っていたのですが、学科によっては授業時間外に補講が必要という現実もありました。
また、日商簿記2級の合格率が下がった回があり危機感を感じ、東京IT会計専門学校から講師派遣や教員の講習会に参加し私たち自身もスキルアップを図っているところです。その他の取り組みとしては高大連携のプロジェクトを導入して、日商簿記1級の合格者も輩出することができました。
岡崎商業で日商簿記1級・2級が取得できるという生徒の夢の実現のため教員のスキルアップおよび、専門学校や大学との協力体制は続けていきたいと考えています
生徒は高度な資格を目指して頑張っています。質問に来ても一緒に考えているうちに、私たちが答えを与えなくても自分で考え、解決していく力が付いていっているよう思います。私たちは、そういった生徒のサポートをしっかりしていきたいと思います。

IT選手権出場と国家試験指導について

三重県立松阪商業高等学校  

中島 幸信先生

・IT選手権出場にあたって

本校は8年ぶりに全国高等学校IT・簿記選手権大会に参加させていただきました。クラブの生徒に大会の案内ポスターを見せると、自分たちも挑戦してみたいということで、全国大会出場を目標に取り組みました。

・国家試験指導について

国家試験対策の授業時間数が多いので、授業別にやる内容をきっちり分けて進めています。また授業担当者同士が普段からしっかりコミュニケーションを取り、授業内容にズレがないかなどチェックを行っています。同じ目標に向かって進んでいる教員、生徒が目標を達成するために、効率よく進められるようにしています。

この大会は資格取得の支えになっています

和歌山県立紀北工業高等学校  

北山 浩司先生

本校は和歌山の橋本市にあり、地域的に生徒数は少なく1学年4クラスで純粋な情報系の学科はありません。全体として学校も生徒も資格を取らせたい、取りたいという土壌があります。他の高校と比べるとコンピュータに興味のある生徒が多く、またクラブ活動が盛んで自転車部、ウェイトリフティング部などはインターハイの常連です。
私が顧問をしているコンピュータ部ですが、この大会には14年前から出場しております。あまり強い学校ではないのですが、32回大会で個人優勝をしました。コンピュータ部としては、資格を取らせたいということがあるので、その一環として利用させていただいてます。また団体で取り組める数少ない大会です。練習は期末試験終了後に過去問題を解いています。ファイルに問題をまとめておいて、いつでも取り出せるようにしたり、最近はパソコンにデータで保存をしておいて画面上で解く生徒もいます。このような形で演習できる環境だけは整えています。
この大会は勉強をクラブ活動に位置づけられ、資格取得の支えになっており、他校の優秀な生徒さんに触れる良い機会になっています。今後も可能な限り参加したいと思っています。

生徒それぞれが好きな課題を選んで取り組んでいます

福岡工業大学附属城東高等学校  

大石 智富美先生

福岡工業大学附属城東高等学校は1958年に電子系の私立高校として創立されました。現在では普通科39クラス、電気・電子情報科16クラスの約2000名の生徒が在籍しています。
本校には3学科(普通科・電気科・電子情報科)があり、さらに10のコース(普通科Ⅰ類特別選抜、普通科Ⅰ類、普通科Ⅱ類特別選抜、普通科Ⅱ類、普通科Ⅲ類、電気科スペシャリスト、電子情報科スペシャリスト、電気科、電子情報科電子技術、電子情報科電子情報)に分かれます。電子情報科スペシャリストコースについては、放課後の補習講座をITパスポート試験の受験を目標に実施しています。
また15年前よりIT教育の取り組みとして、ITプロジェクトという名のひたすら情報の資格取得をめざすという地味なプロジェクト活動をスタートさせました。当初は15名くらいの生徒しか集まりませんでしたが、現在では3年生が32名、2年生が22名、1年生が30名の合計80名という大きなプロジェクト活動になりました。活動の内容は15年前から変わっていないように思います。まず、こちらが提示した課題の中から、生徒それぞれに好きなものを選ばせます。無理やりさせるとやる気が起きないという生徒もいるので、積極的な指導はあまりしていません。しかしながら生徒は自発的に課題に取り組み、昨年度はITパスポート試験に11名、基本情報技術者試験に4名が合格いたしました。
さて、本学では15年前より学校改革を実施し、これまでいろいろな成果をあげてきました。生徒一人一人の目的に合わせた教育を行い、また行事が多い楽しい学校を目指してきました。まだまだ、道半ばではありますが、生徒にとっては楽しい学校生活がおくれていると思います。
最後に、資格取得という地味な部活動を日々続けている本校のITプロジェクトの生徒にとって、IT・簿記選手権大会という大会は特別な意味のある活動であると思っています。生徒の本気の頑張りを見せてもらうことができること、そして結果が出せた時も出せなかった時も日頃の勉学の成果を発揮出来る場所があること、毎年このような大会を開催していただけることに感謝いたします。

部活動は生徒にとって居心地のいい場所でありたい

福岡県公立古賀竟成館高等学校  

上野 敏隆先生

古賀竟成館高校は古賀市と福津市、新宮町の2市1町で設立された組合立の高校です。前身は、粕屋農業高等学校古賀分校で、昭和37年に古賀高等学校となり、今年で55周年になります。
簿記部の歴史としては、昭和63年に休部状態だった珠算部の名前を珠算簿記部と変えて活動を始めました。当初は、日商2級を取得して推薦入学で進学することを目的に活動していました。そのうち、コンクールや競技会に出場するようになり、平成10年に簿記コンクールの全国大会への出場を果たしました。
全国高等学校IT・簿記選手権大会には第9回から出場しています。簿記コンクールの全国大会に出場し始めた頃と前後して、簿記大会の方でも全国大会に出場できるようになり、全国の先生方とのネットワークができたことが私の財産になっていると思います。
近年は部員不足に悩まされています。そこで、校長からの助言もあり入学前に成績の上位者を集めて勧誘するという試みをこの2年間やっています。しかし、そうやって部員を集めると、一定数の新入部員を確保することはできますが、反面、退部する生徒の割合が高くなりました。確かに成績のよい生徒は指導の効果がすぐに表れますが、決してそういう生徒だけが伸びるわけではありません。指導の中で何かきっかけを与えることができると、生徒はぐんと伸びます。
部活動の目的としては、一つの目標に向かって生徒が団結することです。さらに私は、生徒にとって居心地のいい居場所でありたいと思います。教室には居づらい時があっても、放課後の簿記部では安心できるようにしてあげたい。たとえ大会で高得点が取れなくても、簿記部は楽しかったという思いをして卒業させてあげたいと考えています。

一宮商業電算部の取り組み

千葉県立一宮商業高等学校  

藤井 裕久先生

千葉県立一宮商業高等学校は,大正14年に設立され昨年度90周年を迎えた歴史ある学校であり,昭和46年に全国に先がけて情報処理科を設置した学校でもあります。創立以来,「商業教育は人づくり」を使命とし,「夢は叶う!きっと叶う!」をモットーに,生徒が夢を抱き,その夢の実現のために,自ら進んでチャレンジできる環境づくりを推し進めています。
電算部の紹介としましては,創立45年目となる伝統ある部活動です。全国商業高等学校協会主催のプログラミングコンテスト36年連続入賞をはじめ,各種競技大会での全国大会出場,近年では各種ポスターコンテストへの出品・地域イベントのポスターやリーフレットの制作・パソコン講座の実施など多岐にわたり活動を行っています。
活動内容は,「情喜源(じょうきげん)」という教訓を掲げ,部活動で得た知識や技術を活かし「情報の力で人々を喜ばすことのできる源」となれるよう,我々のプログラム作品を使用した人が上機嫌になるにはを常に考え,プログラム制作とディスカッションを繰り返し行っています。また,プログラム制作活動後には国家資格取得に向けて講義・問題演習を行っています。その成果が,第11回情報科学競技大会IP部門団体優勝,全商協会主催第28回情報処理競技大会千葉県予選団体優勝,そして第36回IT・簿記選手権全国大会出場など少しずつ結果も出るようになってきました。今後も様々な機会を通して生徒たちに目標とやりがいを示し,指導にあたりたいと考えています。

ほぼ毎月何らかの検定を受験 競技大会に出場するために検定で力をつける

大分県立大分商業高等学校  

冨髙 将王先生

はじめに全国からお集まりの先生方に一言感謝を申し上げます。4月に熊本県を震源とした地震に際し、全国各地から多くのご支援並びに温かい励ましの言葉を頂き本当にありがとうございました。おかげをもちまして、九州沖縄地区7代表は元気に本日の大会に参加することができました。熊本県立熊本商業高等学校、園田ひかりさんの力強い選手宣誓のとおり本日は生徒ともども頑張ります。よろしくお願いいたします。
大分県立大分商業高等学校は創立100周年を迎える伝統校です。それに伴い本年度は様々な記念行事が行われております。私自身は本校に三度目の勤務であり、全て簿記部の顧問をしています。簿記部の部員は34名で、3学科(商業,国際経済,情報処理)あるなかで,商業科の生徒が多く、ほとんどが女子部員です。顧問は3名おり、学年単位で指導をしています。活動内容としては、検定試験の受験と競技大会への参加が中心です。1年次からほぼ毎月何かの試験を受験するようにし、高校1年生のうちに高校3年間で取得できるものは取得してしまおうという考え方です。例えば1年生で日商簿記2級、全経1級までは合格できるようにしています。ほぼ毎月何かの検定を受験する状況を作っていますので教員も気合を入れないと参ってしまいそうですが、顧問3人で話し合いをしながら綿密に指導方針を決めています。このペースで2年生、3年生になると日商簿記1級、全経上級、建設業1級など常に上へ上へと目指しています。実績としては、直近で3年前に本校から日商簿記1級合格、さらにその生徒が税理士試験の簿記論も取得しました。
次に競技会についてですが、本年度も全国高等学校IT・簿記選手権大会を含めて6つの競技会に参加します。本年度は、簿記部門の九州・沖縄大会では優勝、個人も完全優勝とまではいかないまでも、3名が入賞して、本日全国大会へ参加しています。過去10年の実績の中でも本年度は成績を残せていると実感しています。毎年参加している競技会の実績も上がったり下がったりで、うまくいかないこともありますが、検定試験と競技会の指導のバランスを見ながら取り組んでいます。例えば競技大会に出場するために検定で力をつけていこうというように、日々練習に励んでいます。
また、生徒たちが考えた5つのオキテには、「部活を休まない・健康に留意し倒れない」などありますが、なかなか守られていないのが現状です。ただ、「入部して良かったと思える3年間にしよう」というものは、みんな口を揃えて「良かった、良かった」と言っているので守れているのだと思います。一方、私ども教員が心がけていることは、日商2級と全経1級までは専門学校などに頼らずに、高校教員自身で指導するということ。そして簿記は個人ではなくチームでやるのだということです。そのため、褒めるときはチーム全体を褒めるようにしています。ただ、叱るときはこっそり個人を呼び出して叱るようにし、呼び出すときも、あからさまではなく生徒がトイレなどに立ったときに声をかけてなど配慮しています。基本的には褒めるを3、叱るを1の割合でやっています。また、忙しい時でも必ず部活に3名のうちだれかが顔を出すように心がけています。
最後に、大分県の簿記部事情についてですが、県内に簿記部を設置している学校は4校しかありません。さらに簿記に取り組む教員も少ないため世代交代がなかなか進まないのが現状です。本年度も新規採用がゼロなど、商業を取り巻く環境が厳しくなっている印象を受けます。しかし、本日東武ホテルのシャンデリアの下に座り、この場所に来ることができたという感慨深い思いとともに、生徒たちへの感謝の気持ちでいっぱいです。この気持ちをぜひたくさんの先生方に味わっていただきたいと思いますので、今後も簿記の文化を広げるため努めていきたいです。

第36回大会 平成28年7月21日実施
千葉県立一宮商業高等学校 藤井 裕久先生、大分県立大分商業高等学校 冨髙 将王先生の講演は平成28年8月4日実施