第35回記念大会 全国高等学校IT・簿記選手権大会
8人の先生が語る我が校のIT・簿記教育

第35回記念大会 引率教師懇談会の様子

引率教師懇談会が選手たちの競技時間を利用して開催されます。毎年、IT教育・簿記教育に熱心に取り組んでいる先生方から、実体験にもとづいた貴重な講演があり、この講演を楽しみにしている先生がたくさんいます。講演を聞いてこの大会の意義を再確認したり、指導方法を参考にしたり、他にはない有意義な時間になっています。また、講演の合間には先生同士が再会を喜んだり、談笑したりとこの懇談会が先生方の貴重な情報交換と交流の場になっています。

講演をして頂いた先生方

この大会に出場するための学習が簿記検定の取得に役立っています

宮城県塩釜高等学校  

青木 重幸先生

1.本校の概要

本校は旧塩釜高校(男子校)と旧塩釜女子高校が平成22年に統合し、各学年10クラスという県内公立高校では最大規模の新しい「塩釜高校」として生まれ変わりました。東に松島湾を展望し、西に蔵王の山々が遠望でき、陸奥の国一宮と知られる「鹽竈神社」を背にした通称「融ヶ岡」の高台に建てられており、春には「鹽竈神社」の境内で天然記念物に指定されている「鹽竈桜」が満開に花を咲かせ自然環境に恵まれています。 部活動では、ボート部・ヨット部・少林寺拳法部はインターハイや全国大会の常連で、その他の部活動では、女子バドミントン部・弓道部が東北大会に出場しました。文化部では、簿記競技部が全国大会出場、吹奏楽部が全国学校合奏コンクール東北大会において優秀賞を受賞しました。

2.選手権大会に向けての活動内容について

1年次は、全商簿記2級の取得を目指し、2年次においては全商簿記1級の合格を目標としています。また2年次開始より授業と課外との併用で1年間かけて全経簿記上級の範囲を学習し、2年次2月より受験可能となっています。年々、各種簿記検定の合格実績が向上しています。
このIT・簿記選手権大会に出場するための学習が、簿記の資格取得の実績向上に結び付いている面もあり、今後とも、この大会に出場して上位を目指す学習を続けていく予定です。
引き続き、この大会の更なる発展に期待しています。

上級資格への取り組み

岩手県立水沢商業高等学校  

戸塚 敏彦先生

本校は、創立86年目となる歴史ある学校で、現在「商業科」「会計ビジネス科」「情報システム科」を設置しています。
校訓は「明・浄・直」で、「正しく強く」、「明るく浄く」をモットーとして力強く堅実な歩調で進み、そして良き社会人として役立つ人になってほしいという意味を持っています。また我々教員も豊かな人間性を備えた社会に貢献し得る人間育成に努めております。
学習のひとつとして各種検定取得を行っていますが、上級資格への取り組みとして情報処理分野において経済産業省基本情報技術者試験の午前免除の認定を受けております。当初は、認定を受けるための申請手続や授業編成などの面で苦労する点はありましたが、このような上級資格取得をクラスで取り組むことにより、生徒自身がやるべきことを認識し自覚することで、より向上心が高まったと感じられます。また、今回のような大会への参加も、日頃の学習の成果を試すひとつの機会となっています。
生徒の進路先としては、専門高校という関係上就職が6割、進学が4割と就職希望者の方が高くなっています。高校生の就職の現状としては、基本情報技術者試験などの上級資格を取得しても、これを直接活用できるような就職先はほとんどないと感じています。今後、これら午前免除や基本情報技術者試験での合格率向上に向けての取り組みとともに、生徒が習得した知識や技術が活用できる進路先の開拓を課題とし、社会に貢献できる生徒育成を行っていきたいと考えております。

三重県立宇治山田商業高等学校コンピュータ部の取組について

三重県立宇治山田商業高等学校   コンピュータ部

松月 大先生

三重県立宇治山田商業高等学校は、創立108年目の伝統ある商業高校です。教育環境に恵まれ、商業・情報処理・国際の3科を擁しています。生徒指導・進路指導とも全職員が一丸となって取り組んでおり、地域から親しみを込めて「山商」と呼ばれています。
本校の目指す生徒像は「文武両道」であり、「武」ではサッカー部、野球部、陸上部、相撲部などが全国大会に出場するなどの活躍をしています。「文」におきましては、情報処理の国家試験合格者数は県内トップです。他の検定におきましても多数の合格者を輩出しています。
コンピュータ部の活動としましては、この大会での全国3位をはじめ、全商の大会では16年連続全国大会出場など目覚ましい活躍をしています。私自身も選手としてこの大会に参加して経験があります。活動内容は、決して特別なことではなく、徹底した問題演習とディスカッションです。
毎日コツコツと問題演習をして、生徒同士が話し合い、問題解決をし、わからない問題をお互い理解し合わせる。個人個人ができた、できないではなく、どういうチームでありたいかを顧問、生徒も強く意識をしてこれまでも、そしてこれからも活動し、更なる躍進を目指していきたいと考えています。

全国高等学校IT・簿記選手権大会への参加に寄せて

岐阜県立岐阜商業高等学校   簿記部

車戸 祐介先生

日頃は東京IT会計専門学校様、とりわけ名古屋校の先生方には格別なご支援とご協力をいただきまして、ありがとうございます。また、今回も選手権大会に参加させていただけることに感謝したいと思います。
さて、本校は今年で創立111年を迎える歴史と伝統のある学校です。これまで多くの著名な先輩方を輩出し、その諸先輩方の功績にあずかり、今の私たちがあるわけですが、伝統を受け継ぐということは現在のポジションを死守することではなく、新たな局面に向かって挑戦することだと思っています。検定試験の受験や各種の大会への参加においても、これまでの成果を維持するのではなく、特に簿記会計の分野において新たなステージへ日々挑戦することこそ、伝統を受け継ぎ、発展させることができると考えています。そういったなかで、昨年度はIT・簿記選手権大会での優勝とともに、公認会計士試験(短答式)に本校簿記部から1名の合格者を輩出できたことは大変嬉しく思っております。ぜひ、高校で簿記を学んだ生徒が簿記を使って社会に貢献できるよう、IT・簿記選手権大会への参加をはじめ、検定試験等にも積極的に挑戦し、簿記会計能力の向上ならびに一人の社会人として精神的にも逞しく成長してほしいと願っています。
今後もよろしくお願いいたします。

簿記教育を通じて生徒のやる気の向上を

大商学園高等学校  

佐田 丈志先生

この10年で少子化は更に進み、大阪府の高校生は約10,000人減少すると言われています。その中で、今後の商業教育が先細っていかないように、商業科としての実績を上げることを常に意識してします。 今最も力を入れて取り組んでいることは、「豊中簿記塾~私たちと一緒に勉強しませんか~」というセミナー活動です。日商簿記検定の受験に挑戦中または、受験をあきらめかけている社会人や学生を対象にし、大商学園の簿記部員やOBたちとともに、参加者の質問に答えるかたちで運営している無料のセミナーです。現役の部員たちは、大人たちが一生懸命に学ぶ姿を見ることが良い刺激となり、以前よりも一層自分の取り組んでいる勉強に誇りと情熱を持つようになりました。
生徒の指導に関して常に念頭に置いていることは二つあります。 まず一つは、「簿記を学ぶことを通じて人間性を高めてほしい」ということです。たとえば、日頃の言葉遣いや表情に気をつけるように指導しています。使う言葉で人間性は変わってくると思います。普段から、「無理だ」とか「限界だ」とか、そういう言葉は使わせないようにしています。「無理だ」や「限界だ」を言わずに一生を過ごせたなら、その人生は得るものがとてつもなく多い人生になるでしょう。
また、もう一つは、「教師のモチベーションが高ければ、生徒のモチベーションも高まる」ということです。これは、初めて簿記を教えて頂いた恩師の姿を見て学んだことです。昔自分が受けた情熱的な簿記の授業を今も忘れることはありません。教師の本気、教師の熱意が伝わってくる、そんな授業でした。わたしはいつも、自分のエネルギーを生徒に向けて伝えることで、生徒に元気とやる気を与えたいという思いを持って、生徒と一生懸命に向き合うようにしています。

コンピューター部の取り組みについて

岡山県立笠岡商業高等学校  

東 義信先生

笠岡商業は岡山県の西に位置し、商業科と情報処理科を設置しており、1年次はくくり募集として共通の科目を勉強します。「情報処理」は1年次に4時間あり、商業科の生徒は2年次から全くなくなるので、全商情報処理のビジネス情報部門を9月に2級、1月に1級を受験します。ITパスポートも受験すれば合格する力がある生徒はいるのですが、学校で受験できないため、受験しない生徒が多くいます。こういった生徒が受験すれば合格者の人数ももう少し増えると思っています。
さて、コンピュータ部の取り組みとしましては、商業実務競技会(岡山県)、このIT簿記選手権大会、全国高等学校情報処理競技大会、情報処理選手権大会などに出場します。検定試験は1年生のうちに情報処理検定1級、ITパスポート、2、3年生で基本情報、応用情報、日商簿記検定の2級を受験します。1年生で大体完成させ、2年生の6月には戦える状態を作ります。
顧問になって最初はどうやったら勝てるのかわからず、いろいろと多くの先生に聞きました。初めての大会である岡山県の商業実務競技大会(6月)の団体では、惜しくも2位だったのですが、個人で2名全国に出場することができました。次の商業実務競技大会(新人戦10月)では、自分の中では絶対に勝てると思っていたため、その甘い部分が生徒に伝わったのでしょう、勝つことができませんでした。このことを反省し、自分自身が最後まで気を抜かないようにしようと思いました。そして、翌年の商業実務競技大会(全国大会予選6月)では、3位まで得点差が4点という僅差を勝ち抜き、優勝することができました。その大会前日に「同じ高校生なのだから気持ちで負けるな」という話をしていたので、そこで勝つことができ、良い方向にチームが向いていったと思います。
普段の活動は、平日は放課後2時間、土曜日は午前中3時間、そして大会前は朝練を行っています。部長の仕事は先に勉強して他の部員に教えることというのが、先輩から後輩に自主的に引き継がれていて、模擬問題の作成も生徒が自主的に始めました。顧問は問題や情報を収集し印刷をする、重要なポイントの解説などしかしていません。3年間顧問をしていて最初は何をすればいいか分からなかったのですが、生徒が何をすればいいかを私に気付かせてくれました。生徒にもやる気がない時があって、やる気がない時にいくらやらせても点数が出ないので、考え方を変えて、やる気がない時はやらない場合もあります。また問題の選定をするときも生徒のやる気が持続しないので、難しい問題を先にさせたり、(具体的には2部から)など工夫をしています。これまでのことを振り返って見ると、自分はマネージャーをしていると思いました。そのときにマネジメントをすればいいんだということにも気がつきました。
今は良い方向で回転していますが、また頭打ちになることもあるかもしれません。さらに上位を目指してがんばりたいと思いますので、こうしたら良いというようなアドバイス等がありましたらお願いします。

佐賀商業高校 簿記部の取り組み

佐賀県立佐賀商業高等学校  

江川 和寿先生

佐賀商業高等学校は明治40年創立で、100年を超える伝統校です。現在、商業科が4クラス、情報処理科が2クラス、あと定時制が併設してあります。部活動が盛んで、今度の高校総体でも柔道部、フェンシング部等が参加をします。商業系の部活動は、全て全国大会に参加しています。佐賀商業といえば、やはり甲子園で全国制覇をしたことが有名です。
現在、商業部会で仕事に携わっています。佐賀県内では商業科の数が減っています。生徒が減っているというのもあるのですが、やはりもっと若い人が頑張らなければならないと感じます。どうにかして盛り上げようという一心で、様々な活動に取り組んでいます。
簿記部の活動状況は、現在1年生が29人、2年生が2人、3年生が8人、合計39人で活動をしています。簿記部の部員を増やすために、今年3月に卒業した先輩の就職の実績等を載せたパンフレットをカラー印刷で作りました。こういった形で簿記部を何とかしてアピールして、簿記に興味を持つ生徒を増やしていくことが大事だと考えます。昨年度の体験入学の時や、今年の4月にこのパンフレットをたくさん配って簿記部をアピールしました。その結果、今年は29人の生徒が入部してくれました。 活動としましては、平日は夕方の4時から6時半、土日は半日だけ、大会前や検定前の土日でも9時から4時まで活動をしています。1年生に関しては11月の日商2級の勉強をしております。そのために日商の3級から授業を始めています。順調に1年生で日商の2級に合格したら、そこから1級の指導をやっていきます。3年生に関しては特に指導は行っておらず、競技会と検定取得へ向けた活動で分かれて勉強するということをしております。
部活内で、お互いに切磋琢磨し、さらに協力し合い「仲間意識」を強くもってさらに上を目指しています。また、学習面だけでなく、社会人として必要な人間性を、校内の清掃活動や日頃の礼儀の面を通して伸ばすような指導を目指しています。

多くの大会に参加して、生徒達に目標をもたせる

沖縄県立美来工科高等学校  

下地 勇也先生

沖縄県立美来工科高等学校は今年で52年目を迎える学校です。52年前というと、アメリカ統治下にあったので当時は琉球政府立中部工業高校として誕生しました。その後本土返還がなされまして沖縄県立に名前を変えました。11年前に学科改変とともにITシステム科とコンピュータデザイン科という情報科を加えて工業4科、情報2 科の合わせて6科、1学年8クラスの学校です。
進路指導に関しては、生徒の個に応じた進路指導ということで学校全体ですと進学する生徒と就職する生徒が半々ぐらいで、進学に向けた対策講座や就職に向けた対策講座をそれぞれ行っております。部活動も盛んにおこなわれていて、体育系でいうとボクシング、空手道やボーリング部等が全国大会にも出場して活躍しています。文科系にも、全国大会で活躍している部活があります。
私が所属しているITシステム科は、今年で11年目を迎えます。全学年でネットワークを学ぶカリキュラムになっているのですがシスコネットワーキングアカデミーというシスコシステムズ社が提供している教育プログラムを取り入れています。本校では入学生全員に履修させています。「企業人授業」といって、企業の方に授業をしていただくという取り組みもしています。実際の企業ではどういう風に開発をしているのかということを教えていただきました。今年からは、卒業までに基本情報技術者の取得を目指しています。生徒が主体的に取り組んでおりますが、環境は整えようということで、早朝、昼食時間、放課後にパソコン教室を4教室開放して問題集を貸し出したりして、勉強できる雰囲気づくりを行っています。検定前などは、半数くらいの生徒が残って勉強しています。今回のIT簿記選手権大会に関してはITシステム科のICT部という部活動で参加をしております。ITシステム科120名中35名が所属している部活動になります。近年の活動では、沖縄県教科「情報」教育研究会が主催している沖縄県高等学校IT選手権大会で8連覇中です。表計算部門では平成25年度は優勝、今年度は準優勝しました。また、若年者ものづくり競技大会、ETロボコンなどにも参加して、少しずつ結果も出るようになってきています。その他にも情報オリンピックや、リケメン・リケジョIT夢コンテスト、情報処理選手権など、参加できる大会にはなるべく参加をして、生徒たちに目標を持たせるようにしています。

第35回大会 平成27年7月23日実施