第34回大会 全国高等学校IT・簿記選手権大会
9人の先生が語る我が校のIT・簿記教育

第34回大会 引率教師懇談会の様子

引率教師懇談会が選手たちの競技時間を利用して開催されます。毎年、IT教育・簿記教育に熱心に取り組んでいる先生方から、実体験にもとづいた貴重な講演があり、この講演を楽しみにしている先生がたくさんいます。講演を聞いてこの大会の意義を再確認したり、指導方法を参考にしたり、他にはない有意義な時間になっています。また、講演の合間には先生同士が再会を喜んだり、談笑したりとこの懇談会が先生方の貴重な情報交換と交流の場になっています。

講演をして頂いた先生方

高度な資格取得や各種競技大会入賞を目指して

北海道富良野緑峰高等学校  

迫中 学先生

本校は、農業科、工業科及び商業科の3大学科集合型の専門高校として平成10年4月に開校し、本年で16年目を迎えました。設置学科は、園芸科学科、電機システム科、流通経済科、情報ビジネス科の4学科です。
商業科の「商業クラブ」においては、珠算・電卓、情報処理、ワープロに特化した活動を行っています。活動を始めて6年目となる情報処理では、経済産業省の基本情報技術者、応用情報技術者に合格者を輩出し、各種競技大会においても全国大会出場を果たすなど、生徒たちの活躍は目覚ましいものがあります。
今後も各学科と切磋琢磨し、クラブ活動の充実・発展に努めていきたいと考えています。

実践的な学習への取り組み

秋田県秋田市立秋田商業高等学校  商業科

小西 一幸先生

本校は今年度で創立94年となる歴史ある学校です。近年県内の高校の統廃合が進んだことから、平成25年度より秋田県で唯一の単独の商業高校となりました。
本校では、資格取得やIT簿記大会などの各種大会への参加など、学習面での成果を発揮するための取り組みとともに、高校生活を今後の成長において大きく影響する基礎となる期間と捉え、部活動などの課外活動にも力を入れています。 また、本校の特徴的な取り組みの一つに、総合的な学習の時間の中で全校生徒が3年間継続してビジネスの諸活動を実践していくビジネス実践活動があります。商業学習において、資格取得を目標とすることも大切ですが、問題を解くための知識や技術は身に付いても、いずれ仕事に就いた際に発揮できる力ではありません。そのため、資格取得などの学習を通して得た知識を基礎に、ビジネスの仕組みなどを自ら体験する機会としてビジネス実践活動を行っています。
1年次にビジネスの諸活動の基盤部分を全員が学習し、2・3年次に実践活動として大きく三つの分野に分かれます。一つ目の「AKISHOP」は、「秋田を活性化」をキーワードに学校全体をひとつの会社として捉え、商品開発、情報発信、会計処理を生徒自ら実践していきます。各実践活動では可能な限り地元企業との連携を図り、「企業の活性化=秋田の活性化」の橋渡しとなっています。二つ目の「キッズビジネスタウン」は、高校生が日頃学んでいるビジネス学習を小学生に教える取り組みです。学校の敷地内をひとつの町にして、高校生が各仕事先の社長になり、その下で小学生が働いて稼いだ専用通貨「メルク」で飲食や買い物をして、働く意義やビジネス活動を体験していきます。三つ目の「エコロジカルビジネス」は、企業の社会的責任(CSR)を追及した実践活動です。ボランティア活動や海外協力などを通じて、利益の追求だけではビジネスは成り立たないという観点で学習を進めています。
今後も生徒達の成長の場として、これらの取り組みをより良いものにしていきたいです。

目標に向かって努力する大切さを今大会の出場を通して経験させることができました

岩手県盛岡市立高等学校  

菅 康裕先生

1.本校の概要
本校は岩手県内で唯一の市立高校として設置されている学校であり、国公立大学の進学や基礎学力向上を目指した「普通科」5クラス、社会での即戦力を養うため専門科目の知識技能の習得を目指した「商業科」2クラス、英語の理解力・表現力を養い幅広い教養を身につける「英語科(平成26年度より募集停止)」1クラスの計8クラス3学科を設置した普通専門設置校であり、各生徒の進路目標を達成させるため取り組んでいます。また特別活動は「文武両道」をスローガンに多くの部活動がインターハイなど、全国の大きな舞台で活躍しており、部活動の振興にも大きな成果を上げています。
また、H20卒業生以降、意欲的に資格取得に励む生徒が増え、日商簿記受験者が増加し、多数の合格者を輩出しています。

2.選手権大会に向けての活動内容について
本校は簿記部がなく、私自身もソフトボール部顧問であるため、なかなか選手権に向けての活動に時間が取れないのが現状である。出場の希望者を募り、毎日の昼休みや平常課外の枠を確保し(センター試験簿記)活動しています。選手権の問題は基礎から応用まできちんと理解していないと解答できない内容であるため、限られた短い時間での指導は困難であったが、生徒たちの積極性に助けられました。
簿記に興味のある4人が出場を決意し日々仲間と切磋琢磨しあいながら目標に向かって努力する大切さを今大会の出場を通して経験させることができ、大変感謝しています。今後とも、ご指導のほどよろしくお願いいたします。

簿記会計部の活動内容と今後への取り組み

静岡県立静岡商業高等学校  

周防 優子先生

静岡商業は創立116年目の伝統校であり、卒業生は様々な分野で活躍しています。進路状況としては就職が55%、進学が45%であり、進学する者も資格を生かした形で入学しています。
簿記の授業について、1年次に全商または全経簿記2級の全員合格を目指します。 学科改変により、1年次は共通の授業、2年次より多様なコース選択が可能になり、資格取得において成果を上げることができるようになりました。
簿記会計部の活動内容としては、各種検定問題集や大会の過去問題を解いています。高度資格取得のためにWeb配信を取り入れるなど工夫をしています。また、4年前より焼津青少年の家において春合宿を実施しており、親睦を図るなどをしています。昨年度は日商簿記1級、全経上級に合格者を輩出しました。計算を正確に速くするため電卓研修会などに参加し、得意な生徒は電卓検定十段を取得するまでになりました。
今年度は、簿記コンクール静岡県予選において29年ぶりの優勝を果たすことができました。また、電卓競技会では、静岡県大会において個人2位の成績を収め、初めて全国大会に出場します。
今後もさらに全国レベルの大会で上位入賞できるよう、また、より上級の検定資格者が出るよう練習に取り組んでいきたいと考えています。

簿記と情報処理、両方の資格取得を目標にする意識の高い部員がいます

愛知県立豊橋商業高等学校  

朝倉 千尋先生

豊橋商業は、地元の企業・経済界から求められる即戦力の育成・輩出に力を入れています。特に近年ではインターンシップに力を入れており、3年生は登録されている企業の中から自由に実習先を選択しインターンシップを行うことができます。1年生では外部講師を招き、ビジネスマナー実習も実施しています。「机上の勉強だけで終わらせない。」がテーマです。
学科は総合ビジネス科、経理科、情報処理科、国際ビジネス科の4学科で、情報処理科ではJAVAを始めとするプログラミングについて学習の充実を図っています。資格取得を目標とする生徒も多く、教員は傾向分析や弱点の数値化なども行い次年度にフィードバックしています。
情報処理部は、各学年10名程度で1年次は、表計算から基本情報処理技術者試験の基礎を学習し、2・3年生は、国家試験や競技大会の過去問題を中心に、部員同士が切磋琢磨し取り組んでいます。情報処理科の生徒だけでなく経理科の生徒も入部しており、簿記と情報処理、両方の資格取得を目標にするなど意識の高い部員が多数います。
進路は、就職では事務系の求人数が増加しており、就職内定率も安定しています。進学では、四年制大学への進学も可能なカリキュラムを組むことで、大学や専門学校への進学者も多数輩出しています。就職も進学も両方可能な学校です。

クラブ活動を通して、人間的な成長にも力を入れています

奈良県大和高田市立高田商業高等学校  

照本 明先生

本校は昭和29年に創立し、今年60周年を迎えました。生徒の男女比は約1:1で、約600名の生徒が在籍しています。すべての生徒は何らかのクラブ活動をしており、全体の約7割が運動部に所属しています。
運動部では、ソフトテニス部が昨年度インターハイ制覇。弓道部は2年前のインターハイで男子が団体優勝、バスケットボールは昨年度インターハイ出場、野球部も甲子園出場経験があります。文化部では、吹奏楽部、そしてアカペラ部がNHK総合テレビで紹介されるなどクラブ活動が盛んな学校です。 また、本校は進学にも力を入れており、全体の約8割が大学・短大・専門学校へ進学しています。
簿記部の現況をお話ししますと、平日は放課後から18時過ぎまで、検定・大会直前は18時30分まで、休日は9時から16時30分まで活動しています。1年生で日商簿記2級取得を目標としており、生徒には日商簿記1級の取得を意識づける指導を行っています。現在2級に合格し、専門学校の教材を活用して日商簿記1級の取得を目指して勉強している生徒もいます。クラブ活動で意識していることは、上級生が下級生を指導することでクラブ全体の一体感を作り上げたい事、さらには簿記だけではなく人間的にも成長してもらいたい事です。この先の人生の中で「高校時代の3年間があったからこそ今の自分がある。」と思ってもらえるような生徒を育成したいと考えています。
今後もクラブ活動やこのIT簿記選手権大会への出場を通して、生徒たちの一層の成長に力を入れていきたいと考えています。

作品制作のみでなく、検定や競技会のおもしろさも伝えていきたい

香川県立坂出商業高等学校  

光武 淳先生

本校は大正3年に開校し創立100年を迎えた中規模の商業高校で、商業科と情報技術科を設置しております。私の担当する情報技術科は1年次は共通の科目を履修し、2年次からデザイン系のマルチメディアコースと情報工学系のシステムコースを選びます。
本校は部活動が盛んで、今年もサッカーやソフトボールなどが県大会で優勝し、野球部は甲子園出場を決定しました。私の担当するビジネススキル部では、資格取得・競技会への出場・作品制作の3つの活動をしております。資格取得では授業に先行して1年次9月までに全商情報処理検定の両部門1級、12月にITパスポート、2年次の4月に基本情報と生徒の進度に合わせて受験しており、その合間をぬって競技会への出場と作品制作を行っています。
部のもっとも特徴的な活動は作品制作(ソフトウエア開発)です。作品制作は課題発見から完成まで非常に長い時間がかかり、その間で様々な表現活動があるので、能力より真面目さと持久力がある生徒に合った活動です。私は授業や検定・競技会へ向けての学習により基礎をしっかり身に付け、それを作品制作という体験に活かし、その体験を通してさらに学ぶ意欲を呼び起こすといった好循環を期待しています。この両輪がバランス良くかみ合ってこそ生徒も進歩し楽しんで学習に取り組めるのではないかと思っています。
現在の課題は、作品制作にあまりにも比重を置くことで、資格や競技会への参加がないがしろになってくることです。この傾向は、自分の作業を優先してしまうことで、先輩が後輩の指導をするといった自立した活動にも影響を与えるようになりました。今後は、作品制作のみならず、検定に向けての学習や競技会のおもしろさを伝えていかないといけないと思っています。

奨励切磋 ~人格と学問の向上をめざして~

熊本県立熊本商業高校  

木庭 寛幸先生

九州・沖縄ブロックは簿記教育が非常に盛んな地域の一つだと思います。 熊本商業簿記部の部員数は、現在97名(うち会計科61名)です。練習時間は平日4時~7時まで、土日祝日は8時半から5時までで、9時過ぎまで残る生徒もいます。
熊商に赴任してから、どれだけ練習を積んでもなかなか結果に繋がらずに苦しみました。そこで何が足りないのかを模索し、複式簿記の知識はもちろんのこと、生徒、指導者共に人間性を育むことが何よりも重要だということにようやく気付くことができました。挨拶や掃除などの礼節面に力を入れた結果、日商簿記1級などでも少しずつ成果が出るようになり、人間的成長を目指すことで、「熊本県や日本に貢献できる人財の育成」を大きな目標に据えることもできました。
部員数は97名と多いのですが、もし勧誘をしなければ毎年入部者は10名にも満たないと思います。かなり力を注いで勧誘活動を行っています。体験入学での授業、合格者招集日のチラシ配布、入学式での保護者への呼びかけ、部活動紹介、授業時間を割いて複式簿記の素晴らしさを説明したりなど、相当熱心に勧誘を行った結果です。
私は熊商簿記部出身なのですが、当時の熊商は、IT簿記選手権大会の日商簿記1級部門全国優勝を果たすなど、恩師の先生方のご指導により大きな成果を収めていました。しかし、私自身はというと、簿記ができない上にやる気も全くない生徒でした。それが大学進学後に好きになり、教師になったら三度の飯よりも好きになりました。やる気も簿記の力もなかった私を見捨てずにご指導くださったからこそ、今があります。いつの日か簿記会計が素晴らしい学問だ、大好きだと気付いてくれるのではないかと思い、一度入部させたからには最後まで続けさせたい、卒業後も学びを継続させてあげたい、と常々考えています。
私も生徒たちを指導しながら日々勉強させていただいているところです。この大会を通じて、多くの先生方にご指導をいただいたり、他校の生徒さんを見ることによって、まだまだ足りない部分がたくさんあると感じています。指導者として少しでも成長できるよう、これからも先生方、生徒たちから学ばせていただきたいと思います。

宮崎県のITの取り組み

宮崎県立宮崎商業高等学校  

高田 智仁先生

宮崎商業高校は、創立が94年目になり、都城商業高校の次に古い学校です。現在854名の生徒がおり、77%が女子生徒です。進路は7割が進学、3割が就職になっております。今年度は特に男子の入学生が多く、1学年男子が84名入学しました。
検定取得だけではなく今年度からマナー教育を特に重視して行っております。感謝の一礼ということで登校時と下校時に正門と南門を通りますが、そこで生徒は必ず一礼をすることになっております。登校することの感謝、親への感謝、学校への感謝を確認するためにやっております。それと立腰指導を今年度からスタートさせました。
部活動が非常に盛んで、現在37団体の部活動があります。今年度の県の高校総体では6部門が優勝旗を持ってきました。
宮崎県のITの取り組みとして、宮崎県商業教育研究会では、デジタルコンテンツ委員会というものを2年前から立ち上げております。これは簿記や情報のコンテンツをデジタル化して、それらを配信し、生徒はスマートフォンやタブレットを使って自由にいつでも利用できるようにしていきましょうという委員会で、いよいよコンテンツを作成していこうという段階に入っています。できれば全九州でデータを共有できるようになればと模索しています。
現在宮崎商業のITソリューション部は3年目になりますが、最初始めた時は部員が1年生8名しかいませんでした。現在は8名・6名・8名の計22名でやっております。いろんな先生方からのお知恵をいただいたり他校を参考にさせていただいて、先生方と肩を並べられるような部にしていきたいと思いますので、ぜひ宮崎商業高校をよろしくお願いいたします。

第34回大会 平成26年7月23・24日実施